連続ワークショップ「生活を(に)映画に(を)」
- Sota Takahashi
- 3月3日
- 読了時間: 6分
2月16〜18日にかけて、東京造形大学のCSLABにてワークショップを行った。ことの発端は現在の映画・映像専攻の1年生が何かワークショップ的なものを企画することとなり、自分の悩みや状況を五十嵐耕平准教授に相談したところ、僕を勧めてくれて話がきた、という流れだ。この記事が載っているホームページの問い合わせフォームからの連絡であった。
しかしなんで僕に…。ワークショップなんてやったことがないし、何をしたらいいのかもよくわからない。それも含めて一度打ち合わせることにした。そしてオンライン打ち合わせで聞いてみたらびっくり。五十嵐さんに勧められたから声をかけただけで、僕の映画は1本も見たことがなく、インタヴューを読んだだけだという。これはおもしろくなりそうだぞと直感した。僕のイメージするワークショップというのは、なんだか偉そうな経歴を持った講師がゲストとして呼ばれてやるものだと思っていた。そこの講師というのは皆からではなくとも、少なくとも主催者や誰がしかからある程度尊敬されていたり、憧れられていたりするものだと思っていた。しかしそれが全くない。これはいい。つまり誰も僕の言葉なんて求めていないし、求められてもいない。こんなに気が楽なこともあるまい。ただ僕の方は問題ないのだが、一応学生に向けて行うものであるからせめて過去作を見て決めてくれといって過去作のリンクを送ってその日は終わった。その上で断るなら断ってもらって構わないことも伝えて。
それから数日が経ち、過去作を見ていただいた上で僕にオファーが正式にきた。さて何をしようか。せっかくなので『上飯田の話』や『移動する記憶装置展』につながるようなことをしようと思った。例えば場所に根差した題材。
CSLABという場所は、今は学生が自治をしている場所であるが、僕が大学一年生の頃までは食堂だった。新食堂ができたタイミングで、当時の学長である諏訪敦彦の肝入り企画として学生が自治する場所として生まれ変わった。これだ。今の学生たちが昔の食堂を思う企画にしよう。映画を作るのは3日間のワークショップとしては短すぎるので、脚本を書く程度にする。それを3日目に発表する流れにすれば大きな流れはできる。
ただそれだけだと脚本を書くにはまだ不十分な気がした。そこで、登場人物の1人は必ず自分がモデルとなる人物を出すという制約をつけた。これは僕が過去作で度々行っていることで、もし自分ならこうするなと想像する行動を書いていくと、登場人物が何を考えているかを行動原理とする「気持ち主義」から脱することができる。「普通こうするよね」とかいう「普通」ではなく「おれならこうする」という信じられる軸があると人物の展開を想像しやすくなるのだ。
というような流れで、企画はできた。「もし自分が食堂最後の日に居合わせたらどんな時間を過ごすのか」を脚本にして発表するワークショップである。
1日目に学生たちには当時の食堂の記憶がある人物にインタヴューしてもらう。そこで食堂がどんな場所であったかを想像してもらう。
2日目に脚本を書いてもらう。
3日目は発表・講評。
考えてみてさすがに僕が何もしなさすぎると思った。インタヴューを見守り、脚本執筆を見守り、発表を見て感想を言うだけなら僕なんかいてもいなくても一緒である。なので各日の冒頭に「食堂」や「食事」のシーンがある映画の抜粋を学生たちに見せて過去の映画ではこのように描いているということを見る講義をすることにした。選んだ映画は是非学生に見てほしいと思うものの中から選んだ。
企画をしてくれた学生がこのワークショップのタイトルを「生活を(に)映画に(を)」と名付けてくれた。かなりいいタイトルだなと思った。生活と映画が繋がっている感じはなんだか実感があるし、なにより造形大っぽい。
CSLABの職員さんが、CSLAB(食堂)の白地図や、食堂だった頃の写真を学校案内のパンフレットから見つけ出して資料として用意してくれた。インタヴューの相手も教職員の方6名が来てくださることとなった。
参加者も10名程度が参加表明をしてくれた。
かくして準備も整った。
1日目、開始時間は14時。14時の時点で来てくれた参加者は主催の学生1名だけであった。やばい!!!別に僕は少なくてもいいのだが、せっかくインタヴューのために来てくださる6名の方々がいる。その人たちは3人ずつ2回転でインタヴューする予定なのに生徒が1人だと申し訳ない。せめて3人来てくれ…!という願いをしつつ、とりあえず映画の抜粋を見る講義を開始したら終わる頃にはなんとか6人来てくれた。ということでインタヴューを行った。インタヴューに応えてくださった方々は大変誠実に話してくださり、参加者も様々な思い出を聞くことができたように思う。こちらの狙いとしては旧食堂だけでなく、全然関係ない話をしてくれることも狙っていた。こういった仕事ではないインタヴューは雑談の中から脱線してその人自身と出会う体験になるとおもしろい。
最後に各参加者それぞれに印象的な話をしてもらって1日目は終わった。
2日目は脚本執筆日。おそらく僕が最も暇になる予定の日である。だから抜粋映像も様々なものを見せて最初の約1時間くらいを費やした。その後、各々に別れて脚本執筆タイム。3人登場人物が出ることと、そのうち1人は自分をモデルとした人物とすることにした。なかなか題材が決まらないのか、前半くらいはみんなで話している姿が目立ったが、後半になるにつれて執筆者が多くなってきた。質問もいくつか受けた。質問に関しては1つ方針を決めていた。書かれている言葉や出来事が自分にとって信じられるかどうかということを基準にしてほしいということ。無理に映画っぽい出来事を起こす必要はなく、その状況が誰に文句言われようとも自分は信じられるというものにしてほしい。
この日も6人前後が来てくれた。
3日目の発表日。映画の抜粋は東京造形大学の卒業生達がどんな「食」や「食堂」にまつわるシーンを作ってきたのかということを見た。知っている先生達の若い頃の姿が映ると参加者たちの反応もいい。
発表には4人が参加してくれた。当初は10人程度参加予定だったので3人グループを3つ作って発表予定だったが各日で参加人数にかなりのばらつきがあった上に4人しか来なかったので、自分は監督としていて、他の3人に演じてもらうということにした。発表者は最初の15分で動きの打ち合わせというかいわゆる「段取り」をしてもらい、その後発表するという流れである。今回は科白を覚える必要はない。脚本を見ながらで大丈夫だと伝えていたが、多くの学生が覚えようとしてくれた。発表後は感想を言い、最後にみんなから何かあるか聞いた。これは僕が学生だった頃の講評会を踏襲している。諏訪さんは誰の発表のあとでも必ず最後に「皆さんから何かありますか?」と学生からの意見を聞いていたのだ。
4人の発表が終わったら意外と2時間くらい経っていた。当初予定していた10人がそのまま来ていたら終わらない時間である。4人になってよかった。時間的にはそのまま終わってもよかったのだが、せっかくなので各々の発表を通じて思い起こした映画のシーンをさらに抜粋として上映した。僕がどう思ったかというよりも過去に似たことに挑戦している人を紹介した方がためになるだろうという意図である。
僕の初めてのワークショップはこんな感じで終わった。参加者の反応を見ながらどんなことを話すのか考えていくことは僕も楽しかったのでまたやりたい。ただこのやり方だと場所が重要になってくるので、どこでもできるというものでもないのが難しいところだ。

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