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意外と楽しい宣伝活動

  • 執筆者の写真: Sota Takahashi
    Sota Takahashi
  • 2023年7月20日
  • 読了時間: 3分

 『上飯田の話』は前評判がほとんどないまま4月に上映が行われた。賞レースでの受賞経験はなく、クチコミも皆無に等しい状況で、集客がどれくらいかがわからなかった。その不安から上映直前に行なった宣伝は映画館の前でフライヤーを配ることだった。できうる宣伝は大体した上でやれることはそれくらいしか残されていなかった。


 正直にいうとフライヤーを劇場前で配るのは嫌だった。なんだかみっともない気がしたし、もしその映画館で知り合いが出てきてばったり会ったら…それこそ顔から火が出るほど恥ずかしい。映画監督って普通こういうことはしないでしょ。けどそれは配給会社がしっかり宣伝をしてくれて前評判もあって、前売りなんかの売れ行きも良い場合。自主配給で人を呼ばなければいけないことがわかっている僕にとって背に腹は代えられない。今できる宣伝をとにかくやらねば。ということで配った。もしかしたらこのブログを読んでいる方もユーロスペースの前で配っていた僕を見たことがあるかもしれない。


 予想していたとおり、恥ずかしいものは恥ずかしい。「映画上映します!よろしくお願いします!」とか言いながらフライヤーを渡しているときに何人かの知り合いが通ったりするともう消えてなくなりたいくらいの気持ちになる。何も悪いことをしていないのにペコペコ頭を下げるのもダサい気がしてくる。


 ただやってみて、意外と楽しかったという気持ちの方が大きい。こちらがかっこわるいことをしているから、同情心がはたらくのだろうか。フライヤーを見て少し声をかけてくれたり、その受け取る仕草が丁寧だったりする方がいて、嬉しくなる。一度、自分も昔映画監督になりたくて映像業界に入ったが今はテレビの仕事をしていると、思い出話を話してくれた。僕はそういう思い出話を聞くのが好きなもので(それを続けていたら『上飯田の話』ができたようなものだ)ついつい話してしまった。こういう体験は、ただ映画館に行っているだけではできない。フライヤーを渡した人が「今夜見に行きます」と声をかけてくれたのも嬉しかった。実際その日の夜に劇場でお会いした際にまたお話できたこともいい思い出になった。「もう見ました」という人もいたりした。いずれにせよ僕の人生にそれまで一切関わることのなかった人たちとこうして偶然出会えて、話せる場ができたのは楽しかった。こんな体験は探して見つかるものではない。それが自分の映画の宣伝をしながら、ちょっとの恥をかくだけでできるのだから、僕は悪くないと思っている。次の映画のタネをもらえた気がした。

 あとさすがユーロスペースだなと思ったのは、著名人に多く会った。あの映画館のあのプログラムディレクターでしょ、映画批評家のあの人でしょ、笑いながら怒る芸で有名なあの人でしょ、その隣にいた変わった声の俳優さんでしょ…。そういうときは普通の映画ファンに戻る。「あ、あの人だ!」と思って顔を覚えてもらうチャンスだと思ったりもする。そういう人は多分僕のことなんて覚えていないのだろうけれど。


 フライヤー配り、もしかしたら意外と性に合っているのかもしれない。もしこのブログを読んでいる方でフライヤーを配る要員が必要な方はお声がけください。交通費と多少の謝礼はほしいけど、喜んでやりますよ。

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