top of page

スカウトとか色々 20190719

  • 執筆者の写真: Sota Takahashi
    Sota Takahashi
  • 2020年9月20日
  • 読了時間: 7分

下記記事は2019年7月20日こちらで公開したもののBUです。

 

今日でここスボティツァに着いて1ヶ月が経った。

前回の投稿から若干の進捗があるのでそれについて、またそれ以外の活動についても書いていく。


イリヤについて



最近よく行くバーがある。Bass Barというのだけど、そこの地上は劇場になっていて、建物の側面の小さな入り口を通ると半地下の店内に入れる。そこでイリヤという17歳で金髪の男の子と会った。彼はいわゆるパリピっぽい雰囲気で馬鹿騒ぎが好きな人だ。僕は最初この人がどうもノリだけで、後先考えずに行動しちゃいそうで嫌だなと思っていた。チャラさが鼻についた。しかし3日連続で会うと、違う印象を持つようになってきた。彼の目は時折すごく悲しそうな表情になる。それがすごく気になった。もしかしたら彼は本当はすごく繊細な人で、ここに来ることで何かが吹っ切れる。そう考えいているのかもしれない。彼はここに来なければいけない何か事情を抱えているのかもしれない。その事情は彼の力では今はどうすることもできないことで、それに屈するしかない状況にいるのかもしれない。ここの国の人は総じて「自分たちは貧しい」ということを口にする。例えば国の経済状況、家族、周りの環境、彼は様々なものからつかの間、このバーにいる間だけは逃げようとしているのかもしれない。居酒屋で会社の悪口を言い合っているおっちゃんとは質が全然違う問題を彼が抱えているのではないかと思う。

どうしても気になって1週間ほど前に彼に僕の名刺を渡した。僕の映画に出てもらえないか話をするためだ。まだ連絡は来ていない。


彼の何に惹かれたのだろうか。僕はなんとなく少しだけ彼を羨ましく思っているところがあるのかもしれない。なんでか。その理由を探りながらこれを書いていると、ぐるぐると脳の中の沼がゆっくりと対流を始めていることを感じている。僕と彼は似ていないと思っていたけれど、もしかしたら似ているのかもしれない。僕は自分の力ではどうしようもないくらいの事情に向き合っていなくて、「抵抗してもしょうがない」と諦めて閉口しているのかもしれない。のっぴきならない状況について考えることを止めているのかもしれない。そう思うと彼と僕がどこかでつながっているようにも思えてきている。


先日久々にBass Barで彼と会ったのだけど、興味はあるらしい。ただ連絡は来ていない。僕の予想では他のことが忙しくて後回しになっているのかもしれない。

最初は彼をじっくり待とうとも思っていたのだけど、こちらからもモーションをかけていかないと。


ところでBass Barは例えば一人寂しく旅をしている場合には、非常に良い場所なのでスボティツァに旅行に行った際には是非行ってみることをオススメする。

23時から0時くらいに行くとちょうど良い。


収録について



アナからの紹介で現地の音楽バンドのボーカルをやった。といっても僕は歌うのがすこぶる下手くそなので、朗読に近いような発音となった。

バンドは即興系の音楽をやっているところで、映画の音楽を彼らに依頼することは全然できそうだ。

その時の収録前の写真が上のもの。僕はラキヤを飲んでいるところです。

彼らはまず酔った状態からスタートするとのことで僕も若干の高揚感を出すために飲んでいます。


ちなみに読んだのは詩人、大手拓次さんの「のびてゆく不具」という詩。

僕は結構昔からこの詩人のことが好きで読んでいる。青空文庫でも彼の代表作が読めるので是非興味がございましたらリンクからどうぞ。「藍色の蟇」という詩集からの抜粋ですが、彼の詩は独特の水気と粘着性があり、それが僕にちょうど良い気がしています。また彼はちょっと変わった経歴を持っている人で、サラリーマンとしてライオン歯磨本舗で働きながら詩人としても活動していたという。


ところで今回せっかく声をかけてもらったので、僕はわざと日本語で話す時のような発声をした。

実は日本語と他の言語の発音の決定的な差はこの発音する場所にあると思っている。僕の経験で書くと、日本人は普通に話す時と、カラオケで歌うときとで、声の出し方が違うと思う。ただ英語を話す時は普通に話す時もカラオケで歌う時のように声を響かせるように話した方が良い。なぜなら欧米圏ではこの発音が一般的だから。よく他のアジア圏の人の声は大きいという話を聞くのだけど、これも声量的に大声を出そうとしているのではなく、発声方法がそもそも響くようになっているからだと考えている。

で、今回の収録はこの発声方法を使った。そうすればきっとヘンテコなものとなるという自信があったからだ。

わざと音楽にノらなかった僕の声はバンドメンバーにも初めての体験だったらしく、良い効果を産んでくれることを期待しています。


しかし収録した声を聞いて改めて僕の声はキモいなと感じた。低くてオタクっぽい声質、昔からそうで嫌で嫌でしょうがない。


European Film Festival Palić



いよいよ、European Film Festival Palićが始まる。

今回の旅をなぜ7月に設定したのかといえば、この映画祭に3年ぶりに行くために他ならない。

実はこの映画祭のプログラムマネージャーに僕の映画を流させてくれと交渉もした(ヨーロッパ映画ではないからダメだといわれたけれど)くらい僕はこの映画祭が結構好きだ。

理由は簡単で、日本でまだ公開されていない映画を先行して見れたり、近年の映画の状況を垣間見ることができるからだ。あと場所も良い。物価も安い。


僕が今年一番気になっているのはこの映画祭のクロージング作品に選ばれているダルデンヌ兄弟の新作。

他にもクストリッツァの新作ドキュメンタリー、アニエス・ヴァルダの遺作等々、面白そうな作品もあれば、全く知らない作品もある。


この映画祭のプレイベントとしてRajko Grlić(ライコ・グルリッチ)監督の特集上映が近くの映画館で行われたり、クラシック映画の野外上映等も行われている。グルリッチは日本ではほぼ紹介されていないようだけれど、結構面白かった。


「In the Jaws of Life」(1984)の最後の英語のセリフはもう泣きそうになるほど感動した。これはザグレブにいる女性が彼氏を見つけるまでの話と、そのフィルムを編集している監督の物語の2層構造で話が進む。これは映画を見終わった後に上記バンドメンバーの一人から聞いたのだけど、当時のザグレブは移民が多く、皆クロアチア語を話すのだけど方言が微妙に違うらしい。それが最後の最後、第二外国語としての英語を学ぶ主人公が、同じく英語を習っている男性に声かけられるシーンにつながっていく。お互いがたどたどしく、しかも教科書通りの型にはまった会話をしてくところが非常に良い。この映画は全編なぜかアップされているのでここにも載せておく。

ちなみにラストシーンは1:26:07あたりから始まる。

「Čaruga」(1991)の音楽や小道具の使われ方はクストリッツァを思い起こさせる。最初野原に一人たたずむところに、馬に乗った軍人たちからの暴行を受けて全裸で逃げ出し、途中見つけた仲間と、道端で死んでいる人たちの服を剥ぎ取って着る様は、ヒッチコック映画の巻き込まれ型のようだ。見ていて非常に気持ちがいい。グルリッチはクストリッツァと同じプラハの学校を出ているらしい。少しクストリッツァ色を感じた理由もそこからきているのかもしれない。


ところで、上記バンドの収録前にこの映画祭のプログラマーの一人と偶然会い、日本から来て映画を作っていて映画祭にも行く旨を伝えたところ、なんとその人が「じゃあフリーパスをあげるよ」と言ってくれ、僕は会期中どの映画もタダで見られることとなった(!)。

正直こちらに来てからこういう不思議なハッピーがしょっちゅう起こる。ソンボルに行った時に知り合った人と、最初に書いたBass Barで偶然また会い、先日ソンボルに行った際にはその人の家に泊めてくれたり、なんだかバーでも映画に出てくれる人を探していると言うと色々な人を紹介してもらえたり。これはここの人たちの人間性だと思う。

僕も絶対に日本帰ったら旅行者に優しくしよう。


最新記事

すべて表示
ndjcの撮影をしてきました

11月11〜14日にかけて、 ndjc の製作実地研修の撮影がありました。僕にとっては周りがプロだらけの現場で撮影するなんて初めての経験。ただ皆さんとっても話しやすい方ばかりで非常に良い経験ができました。怒鳴る人もいなかったしね。それが一番なんか、ホッとした。怒鳴る現場に行...

 
 
 
撮影最終日に助けられた話

『移動する記憶装置展』撮影最終日、しかもその日の最後のシーンでもあり、映画の最後のシーンでもあった、…の準備中、僕は大変悩んでいた。この映画をどう終わらせるのか全くわからなかったからだ。当初予定していたシーンはどうも違う気がした。それはジャンケンをするシーンで、一応言い訳を...

 
 
 
意外と楽しい宣伝活動

『上飯田の話』は前評判がほとんどないまま4月に上映が行われた。賞レースでの受賞経験はなく、クチコミも皆無に等しい状況で、集客がどれくらいかがわからなかった。その不安から上映直前に行なった宣伝は映画館の前でフライヤーを配ることだった。できうる宣伝は大体した上でやれることはそれ...

 
 
 

留言


© 2020 Sota Takahashi

​st

bottom of page