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しかし不快である

  • 執筆者の写真: Sota Takahashi
    Sota Takahashi
  • 7月1日
  • 読了時間: 4分

 海外に滞在しているとき、用事があって出かけなければならないときに「チッめんどくせぇなぁ」という顔をしながら嫌々綺麗な街を歩くとき、なんか気持ちいい。どうだおれカッコイイだろうと思う。そのとき観光地を突っ切る道を通るとなると、カッコよさはさらに加点される。「観光客邪魔なんだよな」みたいな顔して歩くと加点率は高くなる。電話で現地の言葉を話しながら歩くとなると追加点である。この気持ちの充足感はアジア人差別発言を受けた瞬間に全て台無しとなる。


 毎日1回程度、運が悪ければ数回、差別発言を受ける。最も多いのは「ニーハオ差別」と呼ばれるものだ。「ニーハオ」と言われることはべつにいい。ただ実際に言われてみればわかるが、挨拶以上に侮蔑の意味をこめていることが明らかなのだ。すれ違いざまにニヤニヤ仲間同士で笑って、言葉を投げつけ、そのまま逃げていく。挨拶ではない。書かないけれどより強い侮蔑語も合わせ技で言われる。セルビアが外国人労働者を誘致しているならまだしも、こちらも頼まれてセルビアに来ているわけではない。自分で好き好んで来ているのだ。ましてやここは民族間で紛争をしていた国である。外見から明らかに他民族だとわかる黄色人種が差別的発言を受けるのはしょうがないことかもしれない。

 しかし不快である。


 言ってくるのは基本的に未成年だ。大人から言われたことは今回の滞在ではない。ただ大人が侮蔑語を知らないわけがなかろう。大人達は自制しているのだ。自制していることは良いことだと僕は思っている。差別をなくしていくための基本は「思ってもやるな」ということだろう。思うのはいい。人は誰しも多少の差別はするものだと思っている。僕もしていないとは言えない。しかし差別は良くないと思うから、理性的に抑えたり、あるいは自分が感情的に思ってしまったことを修正したりしている。未成年者というのはまだその理性がうまく機能できていない時期なのだと思う。だからどうなるのかなと思って差別的な行動をするのだろう。いつになるかわからないが、ああ自分がやっていたことは間違っていたんだなと思ってほしい。そのときに多分僕はこの国にいないだろうが、せめてこれ以上の被害者がでなければいい。できれば次の世代にもそのことを話してくれたらいい。

 しかし不快である。


 別に頼まれてここにいるわけでもなく、ましてや未成年なのだから、多少は寛大な気持ちになりつつもやはり嫌なものは嫌である。今は翻ってこの不快さのエネルギーを言語を学ぶモチベーションに変換している。そういうことをしたらダメだということを現地語で伝えられるようになりたい。こちとら皮肉屋なので可能な限り皮肉たっぷりの言い方をしてやりたい。そんなことができたらさぞ痛快であろう。冒頭に書いた点数は100億点加算だ。そのために今セルビア語を勉強している。

 ただ心配なことが1つある。ようやく満足に話せるようになったとき、グローバルスタンダードの波がここにもやってきて、誰しもが既にアジア人への心無い言葉を言わなくなっていたら、今苦心して学んでいる僕の復讐計画は失敗してしまう。それほど残念でかつ嬉しいこともあるまい。


〈追記〉

 侮蔑語を話したり、あるいは差別的ジェスチャーをする人達は悪いことをしているという意識が本当にないのだろう。ワールドカップで韓国サポーターがネット配信をしている後ろで目を吊り上げるポーズをしたメキシコのおじさんが有名になっていた。彼はさる協会の会長であったのだが、この事件がネット上で炎上を始めると辞職したらしい。しかし本当に彼は何か悪いことをしたと思っているのだろうか。このおじさんはその後会長職を辞したらしいが、これは単にネット炎上の火の粉がこの団体にかからないための形式的なものにすぎないだろう。この人の周りにはアジア人がいなくて、目の前で傷ついている人がいないから、こういうことができるのだ…そう思っているし思いたい。またそうでなければ困る。もし周りにアジア人がいて、その人たちにも平気で行うことが普通だと思っていたら…ということは考えたくない。そんなことをする人がこの世にいると思いたくない。とにもかくにも、彼は吊り目ポーズをしても良いと思っているのだ。これからもそう思い続けることはかまわないが、理性によって形式だけでも変なポーズをしないでほしい。

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