『上飯田の話』のゲストについて
- Sota Takahashi
- 2023年8月28日
- 読了時間: 4分
『上飯田の話』のアフタートークゲストは豪華だった。このことには自信を持っている。この規模の映画にしては他にないほどの豪華さである。少し最近の日本映画に詳しい人が見たら「こりゃすごい」と思ったに違いないし、現に多くの知り合いから「豪華ですね」と言われた。ゲストに来た方も言っていた。
ここ最近「あれは劇場さんから言われたんですか?」と聞かれることが多い。特にこれから映画を公開しようと思っている方から。もしかしたらそうした方にとっては、逆に「あそこまで呼ばなきゃいけないんじゃないか」と思われてしまっているのかもしれない。なので、ここではっきりいっておきたい。アフタートークゲストの皆さんは僕の判断で来ていただきました。劇場さんからは土日は舞台挨拶とかゲストを呼んだ方がいいとはアドバイスいただきましたけどね。
『上飯田の話』は国内の映画祭にことごとく落ちた。本当にありとあらゆる映画祭に出した。中には上飯田町からそんなに遠くない、というか都内にでるより全然近い場所で開かれる映画祭にも応募して、落ちた。ものすごく凹んだ。で、『上飯田の話』は結局どこの映画祭の後ろ盾もないままに公開することとなった。これは結構怖いことだった。というのも自分が映画を見に行こうとするときにやはり「〇〇映画祭入選」とか「受賞」とか、そうした評価を気にして見ていたからだった。それは誰かがおもしろいと思ってくれたという証明であったし、公式HPに並んでいる著名人のコメントよりずっと信頼を置いていた。そんな自分自身が見たいと思うきっかけがないままに上映に踏み切るのは怖い。ただそれ以外に、僕が映画を見にいくときに誰かがゲストに来るなら見に行こうと思うことはあった。これしかない。この映画の関係者の知り合い以外にリーチするためには僕以外の方の名前を借りよう。
これはかなり恥ずかしいことであった。やっぱり映画それ自体の力で人が来てくれることが一番いい。ゲストの方の名前を借りると仮に人が入ったとしても「そりゃあれだけのゲストが来ているんだから入るよね」とか嫌なことを思われるだろう。あるいは「ああこの監督は映画界のこの”場所”に自分を位置付けたいのね」と思われるかもしれない。というか、今そう思っている人もいるだろう。他にも恥ずかしい思いをするリスクはあった。ただ、僕はもうこの恥は捨てることにした。そんなことを思って誰も来てくれなければ、それこそもっと恥ずかしい思いをするはずだ。無駄なプライドはとりあえず今は脇に置いておいて、どう思われても構わないと思おう。とにかく人を呼ばなければならない。これが第一だ。下手すれば『上飯田の話』が僕の生涯唯一の劇場公開作にもなるかもしれない。だったら「恥ずかしがらずにやればよかったな」と思われるようなことでもやるしかない。
ということで人からどう思われるのかはとりあえず二の次に、豪華ゲストに来ていただきました。来てくださった方は楽しんでもらえたかしら…。一度この恥を捨てると、もう腹を括ってむしろこのトークが聞けなかった人たちを後悔させてやるくらいおもしろいことをしようと思えるようになれた。それに僕自身も楽しもうと思えた。現に楽しかったし、ゲストの方々の話し方は僕自身もとても勉強になった。「映画を語るとはこういうことなんだ」という気づきもたくさんあった。
ちなみにゲストを選んだ基準は、第一に僕が話したいと思った方にお願いしました。この人の言葉を聞きたい。そう思った方に連絡をしました。そうしたら僕は恥よりも、楽しみが勝るようになりました。なのでもしこれから劇場公開をする方で、ゲストを呼ぶかどうか悩んでいる方がいましたら、まずは自分が話したい方がいるかどうか。いたらお声がけすると自分が楽しくなるのでおすすめです。誰かから意地悪なことを言われたら「『上飯田の話』のたかはしのやり方を模倣しました」とかなんとか言っておいて、一緒に恥を乗り切りましょう。
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